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Web2.0時代のコミュニケーション空間マネジメント手法

― SNSから生まれた戦略的ビジネスモデル ―

有限会社マサイチネット 小林 信三、藤川 立也、井上 良一




2003年、Masaichi.NETは独自のコミュニティ運営手法とコンセプトをもったSNSとして生まれ、その運営の中から、人のつながりをビジネスに変える新たなビジネスモデルを「MBCマサイチ・ビジネスセンター」として確立した。 MBCでは、従来の「紹介型SNS」ではなく、「参加型SNS」として、人や組織のビジネスのつながりを重視したコミュニティ空間を形成し、そのSNSから生まれる豊富な人的リソースをもとにさまざな事業を展開している。

さらに、マサイチネットがSNS運営において実践してきた Web空間でのコミュニケーション手法は、『高次情報空間マネジメントモデル』として体系化され、このモデルは「組織コミュニケーションコントロールシステム」として、従来のSNS(コミュニティツール)ではない、グループウエア(情報管理ツール)でもない、新らたな組織コミュニケーションの環境をビジネスに提供する。


1. 有限会社マサイチネットの事業展開におけるSNSの活用

(1) 会員制掲示板(BBS)からのスタート
2001年、藤川立也・小林信三が、掲示板を利用した同業種組合向け会員制Webサイトを構築し、インターネットを活用した会員間の情報共有とコミュニケーションサービスの提供をはじめる。
この頃日本では、インターネットが一般に普及しはじめた時期でもあり、同サービスは組合員同士だけではなく、お客様を交えた交流へと利用範囲が広がり、掲示板のコミュニケーション空間がサイト内に多数作られるようになった。

(2) SNSとしてのMasaichi.NET誕生
会員制掲示板サイトの参加者は、組合員から組合員、お客様からお客様へと人のつながりが広がり、当初の目的であった同業種以外のコミュニティも多数発生するようになり、徐々に現在SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と呼ばれるスタイルへと発展していく。
2003年、それまでの単純な会員制掲示板システムに人脈とコミュニティ空間構造を取り入れたMCSマサイチ・コミュニケーションシステムが小林信三により開発され、これまでの会員制掲示板サイトをMasaichi.NETとして公開し運用を開始する。(同年7月、有限会社マサイチネットを設立)

(3) SNSをツールとした人的ネットワークの拡大
その後、数年間でMasaichi.NETは参加者1,000名以上、コミュニティ空間500以上のSNS空間に成長し、その空間にさまざまな交流や活動が生まれる。その中で、ビジネスに関するコミュニティ空間も少なくなかったが、実際にビジネスとして成功する事例はごくわずかであった。その要因について、このサービスの創設者である、藤川立也(営業部門最高責任者)、小林信三(システム部門最高責任者)は、 ̄娠通漫↓▲轡好謄猝漫↓7弍通未らそれぞれ以下のように分析する。

 ̄娠通
信頼関係やプライベートな付き合い(紹介関係)に基づいた人のつながりはSNSの特性の一つであるが、それが必ずしもビジネスのつながりではない。むしろ、こうした「紹介関係」にビジネス関係(金銭関係・契約関係)を安易に持ち込むと本来の人間関係に亀裂が入る恐れがある。

▲轡好謄猝
参加者のボランティア精神や相互支援、自由平等を建前とするSNSのコミュニティ空間において、ビジネスの基盤である閉鎖的・階層的な空間構造を持ち込むと参加者の交流意識に距離感が現れてしまう。

7弍通
当時のMixi等に代表されるSNSのビジネスモデルである「広告ビジネス」では、最低でも数万人単位のコミュニティ空間を形成する必要があり、リアルな人のつながりを重視しているMasaichi.NETにとっては、ねずみ算的な会員数の拡大は人のつながりの質を低下させ、結果的にビジネスにおける信用関係にマイナスの影響を与えてしまう。(例えば、大衆SNSで問題になっている架空参加者や詐欺的なコミュニティの発生など)


(4) ビジネスコミュニティとしてのSNS
こうした、ビジネスシーンで発生するさまざまなSNSの問題を克服し、なおかつそれまでMasaichi.NETで培った人脈(人の信頼関係)の価値を高めていく一つのビジネスモデルとして、2004年、現実のビジネスでの契約関係を基盤とするSNS「MBCマサイチ・ビジネスセンター」を考案、翌年1月に商用サービスを開始する。
MBCマサイチ・ビジネスセンターは、会員制の有料ビジネスコミュニティであり、主にビジネスマッチングおよびビジネスプロジェクト支援などを中心とした会員サービスを提供している。MBCのシステムインフラとしてはMasaichi.NETと同様 MCSマサイチ・コミュニケーションシステムが採用されているが、MBCにおけるコミュニケーション空間の形成手法はMasaichi.NETとは大きく異なり、MBCでは原則として会員同士の自由なコミュニケーション空間は存在せず、運営者である有限会社マサイチネットが会員からのビジネス案件や要望に応じたマッチング空間および業務・プロジェクト空間を契約関係に基づいて提供する仕組みになっている。
MBCでは、会員間のコミュニケーション空間を作る際には、以下の3点を明文化した形で参加者の合意契約を得ることを原則としている。

≪MBC内でコミュニケーション空間を設置するにあたっての必須条件≫
「参加者の責任と対価」の明確化
「存続期間」の明確化
「情報伝達範囲」の明確化

この3点において、「紹介型(プライベート型)SNS」と「参加型(ビジネス型)SNS」の明確な区分けが可能となり、前者は人の信頼関係のつながりを、後者は人や組織のビジネス関係のつながりを重視したコミュニティ空間を形成することが可能となった。

(5) Webを活用したプロジェクトマネジメント手法の確立
これまでにMBC内で行われてきたコミュニケーション空間(プロジェクト)の事例としては、Webサイト構築事業、経営コンサルティング事業、地域コミュニティ活性化事業、同業種・異業種・研究会ネットワーク支援事業、などがある。これらの事業はすべてMBC会員メンバーを中心としたプロジェクト形式で行われ、実際のプロジェクトの運営は、Webを活用したMBC独自のプロジェクトマネジメント手法が取り入れられている(図1)。

図1. MBCビジネスプロジェクト基本フォーメーション


2.マサイチネットがWeb2.0の先に見るもの

(1) 『高次情報空間マネジメントモデル』の誕生
前節のように、有限会社マサイチネットでは、これまでの自らの事業経緯を振り返り、Webを活用したコミュニケーションスタイルの変化において以下のような流れを捉えている。

【Webを活用したコミュニケーションスタイルの変化】
(世代) (特徴)(一般化したサービス例)
Web0.0?⇒ メールでの一方向的な情報伝達 メーリングリスト
Web1.0⇒ 掲示板システムを利用した情報伝達+情報共有 2ちゃんねる
Web2.0⇒ 情報を共有する集団(コミュニティ)の形成 Mixi
Web3.0?⇒ 情報共有集団を組織化する仕組みの形成 ????

マサイチネットがWebサービスを開始して以来、この一連の流れについて考察・実証を繰り返してきた、MCS開発者小林信三(M.B.A.)とMBCコンサルタント井上良一(元神奈川県企画部次長IT担当)は、こうしたWebにおける一連の情報共有・コミュニケーションの手法に関して『高次情報空間マネジメントモデル』(2008.1)として以下のような体系化を行った。(図2)

図2.『高次情報空間マネジメントモデル』概念図


図3. 『高次情報空間マネジメントモデル』に基づく組織形態の変化


(2) MIOSによる『高次情報空間マネジメントモデル』のシステム化
現在、有限会社マサイチネットでは、このマネジメントモデルをベースとして、従来のSNS(コミュニティツール)ではない、グループウエア(情報管理ツール)でもない、全く新たらしい組織コミュニケーションのインフラとモデルを提供することを目的として、「MIOS」(Masaichi Intelligent Office System)の開発・製品化を進めており、このシステムが今後Web2.0に次ぐ世代において企業組織にとっての戦略的なビジネスモデルの一つとなることを期待している。

■ MIOSのコンセプト ■

≪情報マネジメント≫
・組織内のコミュニケーションを組織の有形資産として管理・運用する。
・『MIOSコミュニケーションカード』を情報媒体にしたシンプルかつ多様性のある情報管理・共有を実現する。
・ユーザーの人的マネジメント能力、情報管理能力を育成する。(⇒検索依存からの脱却)

≪コミュニケーション空間コントロール≫
・参加者の契約的なつながりと身分、役割を明確化したビジネス空間を創造する。
・リアルなオフィス空間構造と融合させる。(ロビー > フロア > ルーム > 情報共有・ コミュニケーション)
・マネジメント空間(管理センター)と業務空間(ビジネスセンター)との分離による強固なセキュリティ空間を実現する。

図4. MIOSにおける情報マネジメントおよびコミュニケーション空間の形成例